シジュウカラの社会note

食と農、会計税務、学び直しを切り口に、 社会のしくみを考えるための思考ノートです。人は、いつでも設計しなおせる。

スーパー・直売所・宅配…どれが主流?|青果物流通の未来

日本の青果物流通は今どう変わっているのか。
結論から言うと、
中央卸売市場中心から、多様な流通が並立する多層構造へ移行している。

特に現在は
✔ スーパー・宅配などの「配送型流通」
✔ 直売所・観光農園などの「体験型流通」
この二極化が進んでいる。

本記事では、日本の青果物流通の仕組みと変化を、構造的に解説する。

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卸売市場の役割と市場経由率

長く日本の青果物流通の中心を担ってきたのは、中央卸売市場である。
大規模市場は全国の農産物流通の基幹であり、価格形成と安定供給を支える重要な社会インフラとして機能してきた。大量の農産物を集荷し、公正な価格を形成し、都市へ安定的に供給する。この仕組みがあったからこそ、日本の食生活は支えられてきた。

しかし近年、その流通構造は少しずつ変化している。農協を通じて市場へ出荷する割合は相対的に低下し、流通チャネルは多様化している。生活協同組合(コープ)向けの産直、スーパーとの直接契約、インターネットを通じた農家と消費者の直接取引など、農産物はかつてより多様な経路で消費者のもとへ届くようになった。

 

日本の青果物流通を支えてきた卸売市場

とはいえ、卸売市場の役割が小さくなったわけではない。輸入品を含む青果物全体でみると、市場経由率は現在およそ50%前後で推移している。2021年度は約53.9%、2022年前後でも50%台前半とされ、青果物のほぼ半分がいまも市場を経由して流通している。市場中心の構造は維持されながら、その周囲に新たな流通が重なり始めているのである。

こうした状況を一言で表すなら、日本の青果物流通は「多層化」していると言える。単一の流通経路が支配するのではなく、複数の仕組みが同時に存在し、それぞれ異なる役割を担う構造へと変化している。

青果物流通は単線から多層構造へ

ー「買いに行く」から「届けられる」へー

この多層化を象徴するのが、配送型流通の拡大である。宅配サービスやECの普及により、農産物は「買いに行くもの」から「届けられるもの」へと変わりつつある。注文すれば自宅に届き、在庫や需要はデータで管理される。時間と距離を極限まで縮める効率重視の流通である。

 

直売所はなぜ人を惹きつけるのか

一方で、こうした配送型流通が広がるほど、対照的な存在として意味を強めているのが農産物直売所だ。直売所は効率を最優先にする場ではない。そこにあるのは、生産者の名前が見える売り場、季節を感じる商品、不揃いな野菜の個性、そして思いがけない発見である。買い物は単なる消費行動ではなく体験になる。家族で訪れ、味を試し、会話が生まれる。直売所は「行くこと自体」が目的になる場所だ。

つまり現代の青果物流通は、届けることで価値を生む配送型流通と、訪れることで価値を生む体験型流通が共存している。効率と関係、利便性と現地性。この二つの価値が並立しているのである。

 

直売所を理解するためには、その構造を整理する必要がある。第一に、立地の原理が異なる。スーパーなどの大型小売は商圏人口や交通動線など需要側を基準に立地が決まるが、直売所は農地や生産者の存在を前提に生まれる。供給側から立ち上がる流通拠点である。

第二に、機能が異なる。スーパーが効率的な商品供給を目的とするのに対し、直売所は生産者や地域を紹介する「ショーケース」的役割を持つ。均質な商品を並べるのではなく、個性を見せる空間である。

第三に、消費体験が異なる。スーパーは買うために行く場所だが、直売所は過ごすために行く場所でもある。家族の外出先、食育の場、地域との接点。購買だけでなく時間を共有する空間となる。

供給起点の立地、表現としての販売、体験としての消費。これらを同時に持つ流通形態は従来の小売には存在しなかった。だからこそ直売所は、流通が多様化するほど存在感を高める。

 

観点 配送型流通 体験型流通
代表例 スーパー・宅配 直売所・観光農園
価値 利便性・効率 体験・関係性
消費行動 日常消費 目的消費
価格 比較的安定 ばらつき
消費者動機 時短 共感・学習
今後 拡大 高付加価値化

効率と関係という異なる価値

配送型流通が広がるほど、人は「わざわざ行く意味」を求める。効率が進むほど、非効率の価値が見える。均質化が進むほど、個性が魅力になる。直売所はその受け皿となる。

現代の青果物流通は単一の中心を持たない。市場、直売所、産直、EC、宅配が重なり合うネットワーク構造である。そのなかで直売所は単なる補助的存在ではない。人と人が出会い、地域が可視化され、食の現実に触れることができる場として、独自の役割を担う。

効率を極める配送型流通と、関係を生む体験型流通。’レジャー’である。
その両方が存在する多層構造こそが、現代の農産物流通の姿なのだろう。

そして直売所は、その中で確実に一つの核になりつつある。