確定申告の相談で非常によくあるのが、
家族や自分への生活費を「給与」や「手当」として処理してしまうケースです。
特に開業したばかりの個人事業主に多く、
・奥さんに生活費を振り込んでいる
・自分の口座へ毎月お金を移している
・帳簿上「給与手当」など人件費にしている
という処理をしてしまう。
しかしこれは、税務上とても注意が必要です。
場合によっては、経費として認められず修正が必要になることもあります。
今回は、個人事業主が間違えやすい「生活費と給与」の違い、そして専従者給与の正しい扱いをわかりやすく解説します。
個人事業主に「自分の給与」は存在しない
まず大前提として重要なのはここです。
個人事業主には、自分への給与という概念がありません。
会社員と違い、事業の利益はすべて事業主の所得です。
生活費としてお金を引き出しても、それは給与ではありません。
帳簿上は
👉 事業主貸(じぎょうぬしかし)
で処理します。
これは
「事業のお金を事業主個人が使った」
という意味の勘定科目です。
つまり経費ではありません。
配偶者や家族への支払いはどうなる?
では、奥さんや家族に生活費を渡している場合はどうでしょうか。
これも原則は同じです。
ただの生活費は経費になりません。
ただし例外があります。
それが
👉 専従者給与
です。
専従者給与とは
専従者給与とは、事業を手伝う家族に支払う給与のことです。
ただし自由に経費にできるわけではありません。
厳格なルールがあります。
最も重要なのが
👉 事前の届出
です。
専従者給与は「届出」が条件
青色申告者が専従者給与を経費にするには、
開始から2か月以内に税務署へ届出が必要です。
正式名称は
「青色事業専従者給与に関する届出書」
提出先は所轄税務署です。
詳しくはこちら(国税庁)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
届出を出していないとどうなる?
ここが今回の相談事例です。
よくある流れ。
① 家族に毎月振込
② 給与として帳簿計上
③ でも届出を出していない
この場合どうなるか。
👉 経費として認められません
つまり人件費ではなくなります。
正しい処理方法
届出を出していない場合はこう処理します。
給与ではなく
👉 事業主貸
に修正します。
意味は
「事業のお金を生活費として使った」
という扱いです。
経費にはなりません。
なぜ事前届出が必要なのか
税務上の理由はシンプルです。
家族への給与は、利益調整に使われやすいからです。
・利益が出たら家族給与を増やす
・所得を分散する
これを防ぐため、事前に金額を届け出るルールがあります。
青色事業者が専従者給与が認められる条件
主な条件はこちら。
✔ 生計を一にする親族
✔ 15歳以上
✔ 事業に専ら従事
✔ 届出済
✔ 相当な金額
どれか欠けても認められない可能性があります。
よくある勘違い
❌ 生活費だから給与
❌ 振込しているから人件費
❌ 手伝っているからOK
これ全部NGです。
届出がすべてです。
税務調査で見られるポイント
税務調査ではここを確認されます。
・届出の有無
・実際に働いているか
・給与額の妥当性
特に「働いていないのに給与」は要注意です。
まとめ
個人事業主が覚えるべきこと。
✔ 自分の生活費は給与ではない
✔ 家族への生活費も原則経費にならない
✔ 専従者給与は事前届出必須
✔ 届出なしは事業主貸
この4つです。
なお、白色の事業者については、そもそも専従者給与の制度がそもそもありません。
経費にはならないです。代わりに事業専従者控除という制度がありますが、経費の実費ではなく、定額の控除になります。
最後に
開業直後は会社の感覚で帳簿を作りがちです。
しかし個人事業は別のルールで動いています。
生活費を給与にしてしまうのは、本当に多い間違いです。
気づいた時点で修正すれば問題ありません。
早めの確認をおすすめします。