少しショックな出来事がありました。
私は今年から税法大学院に進学し、研究や勉強の時間を確保するため、本業では時短勤務を選択しました。
育児のためではありません。
介護のためでもありません。
税理士資格取得と研究活動のため、自分自身の意思で勤務時間を短縮したのです。
すると当然ながら、職場での立場は変わります。
担当業務が変わり、新しい上司がやってきました。
組織として考えれば当たり前のことです。
勤務時間が短くなれば、任せられる仕事も限られます。管理職や責任ある立場を任せるなら、フルタイムで働ける人を選ぶでしょう。
頭では理解していました。
それでも実際にその現実を目の当たりにすると、やはり複雑な気持ちになります。
少し悔しい。
少し寂しい。
そして少しだけ、自分が後退したような気持ちになりました。
しかし、その感情を掘り下げていくうちに、あることに気づいたのです。
私はまだ、組織に評価されたいと思っていたのだと。
組織評価と市場評価は別のゲーム
私は税理士資格取得を目指しています。
現在は税法大学院で研究を行いながら、将来的には独立も視野に入れています。
本来であれば、私が目指しているのは組織の中での評価ではありません。
市場で評価される専門家になることです。
顧客から選ばれること。
相談したいと思われること。
信頼されること。
問題を解決できること。
そうした価値を高めていくことが目標です。
ところが今回の出来事で落ち込んだ。
ということは、心のどこかでまだ組織から評価されたい気持ちが残っていたということです。
考えてみれば無理もありません。
私たちは長い時間を組織の中で過ごします。
上司から評価される。
昇進する。
重要な仕事を任される。
必要とされる。
そうした価値観の中で生きています。
しかし、独立後の世界では評価軸が変わります。
顧客は役職を見ません。
社内での立場も関係ありません。
見られるのはただ一つ。
「この人にお願いしたいか」
です。
組織評価と市場評価は似ているようで全く別のゲームなのです。
何かを得るためには、何かを手放す
大学院進学を決めたとき、私は多くのものを手に入れました。
研究する時間。
学ぶ時間。
考える時間。
税理士資格取得に近づくための環境。
将来の可能性。
しかし同時に手放したものもあります。
勤務時間。
社内での影響力。
組織内でのキャリア形成の機会。
どちらも事実です。
人生はトレードオフの連続です。
何かを選べば、何かを手放さなければなりません。
ところが人は、得たものより失ったものに目が向きがちです。
大学院に行けるようになったことよりも、職場での立場が変わったことの方が強く印象に残る。
これは人間として自然なことなのかもしれません。
私も例外ではありませんでした。
ですが冷静に考えれば、大学院進学という選択をした時点で、ある程度は想定されていたことです。
勉強時間も欲しい。
研究時間も欲しい。
組織での評価も欲しい。
将来の独立準備もしたい。
できれば収入も維持したい。
もちろん全部手に入れば理想です。
しかし現実には優先順位をつけなければなりません。
だからこそ選択には覚悟が必要なのだと思います。
実は、同じ経験をしたことがある
今回の出来事を振り返っていて思い出したことがあります。
実は私は、以前にも似たような経験をしています。
娘が小さかった頃の育児時短勤務です。
当時も組織の中での立場が変わりました。
残業はできない。
出張も難しい。
会議にも十分参加できない。
それまでと同じようには働けません。
もちろん子育てですから仕方ありません。
それでも当時の私は、どこか悔しさを感じていました。
組織の評価軸で見れば、自分が後退しているように思えたからです。
そして、その頃に始めたのが税理士試験への挑戦でした。
組織の中だけで評価されるのではなく、自分自身の力をつけたい。
どこへ行っても通用する専門性が欲しい。
そんな思いがあったように思います。
今振り返れば、あのときの悔しさがなければ、税理士試験への挑戦もなかったかもしれません。
今回は未来が近づいている
それから数年が経ちました。
簿記論に合格しました。
財務諸表論に合格しました。
国税徴収法にも合格しました。
新聞記者から会計業界へ転職しました。
そして今、税法大学院で研究をしています。
不思議なことに、また似たような状況になっています。
時短勤務を選び、組織の中心から少し距離を置く立場になりました。
しかし今回は前回と決定的に違うことがあります。
未来が見えているのです。
育児時短の頃は、未来はまだ漠然としていました。
税理士になれるかどうかも分からない。
試験に合格できる保証もない。
ただ目の前の勉強を続けるしかありませんでした。
しかし今は違います。
税理士資格取得。
大学院修了。
研究テーマの完成。
そして独立。
以前は遠くに見えていたものが、少しずつ輪郭を持ち始めています。
まだ到達したわけではありません。
それでも確実に近づいている感覚があります。
だから今回は、以前ほど不安ではありません。
評価軸を切り替える訓練
今回の出来事は、私に大切なことを教えてくれました。
それは、評価軸を切り替える必要があるということです。
組織評価から市場評価へ。
会社の中でどう見られるかではなく、顧客からどう評価されるかへ。
役職ではなく専門性へ。
社内での立場ではなく市場価値へ。
もちろん組織で働く以上、組織評価を無視することはできません。
しかし、それだけに依存していては独立後は戦えません。
今回の経験は、そのための訓練だったのだと思います。
少し痛みはありました。
正直、悔しさもありました。
しかし、そのおかげで自分が本当に目指しているものを再確認することができました。
私は会社の中で評価されることだけを目指しているのではありません。
市場から選ばれる専門家になりたいのです。
未来はまだ道半ばです。
それでも確実に近づいている。
そう信じながら、今日も税法を学びます。
今日も研究を進めます。
そして数年後、
「あの時、評価軸を切り替えてよかった」
そう言える日を楽しみに、一歩ずつ前へ進んでいこうと思います。