「行動こそ正義。」
私は長年そう信じてきました。
新聞記者として18年間、現場へ飛び込み、事実を集め、記事を書く。税理士試験でも迷うより先に動き、挑戦を続けてきました。
そのため、「決断力」と「行動力」は自分の強みだと思っていました。
しかし今回、副業先の会計事務所での経験を通じて、その考え方が大きく変わりました。
外部顧問先の担当を外れることに
私は外部スタッフとして、クラウド会計の導入支援や経理教育などを担当していました。
ところが、組織内での役割や責任の持ち方、コミュニケーションの取り方などを巡り、最終的には現在担当している外部顧問先についても、今後は任せないという判断になりました。
当初は悔しく、「もう辞めよう」と思いました。
しかし、今振り返ると、原因は相手だけではありませんでした。
「正しさ」は、時に信頼を失う
私は記者時代から、「おかしい」と思ったことを率直に伝え、本質を追究する姿勢を大切にしてきました。
この姿勢は私の強みです。
一方で、組織の中では、その切れ味の鋭さや「正しさ」を優先する姿勢が、関係者との信頼関係を損ねる結果につながってしまいました。
事実を指摘することと、相手が受け止められる形で伝えることは、まったく別の能力だったのです。
また、「感情的にすぐ返信しすぎる」「結論を急ぎすぎる」という指摘も受けました。
最初は受け入れられませんでした。
しかし時間をかけて考えるうちに、「経営者として成長するなら避けて通れない課題だった」と思えるようになりました。
師匠から言われた「白黒つけすぎたね」
そんな私に、代表はこう言いました。
「白か黒か、はっきりさせすぎたね。」
さらに、
「少し時間を置いて、チャンスが来るのを待ってほしい。」
とも言われました。
最初は意味が分かりませんでした。
しかし今なら、その言葉の重みが理解できます。
「決断しない」という経営判断
私は、
- 続ける
- 辞める
この二択しか見えていませんでした。
しかし経営者には、もう一つの選択肢があります。
「今は決めない」という決断です。
これは優柔不断ではありません。
組織も、人も、環境も変化します。
判断材料がそろうまで待ち、未来の可能性を閉ざさない。
これも立派な意思決定なのだと学びました。
選択肢を残す経営者の思考
一度関係を断ってしまえば、その選択肢は狭くなります。
しかし判断を保留すれば、
- 継続する
- 新しい形で協力する
- 自分から断る
- 将来あらためて一緒に仕事をする
すべての可能性を残せます。
私はこれまで「すぐ決めること」が正しいと思っていました。
でも経営者は、「選択肢を残すこと」も大切にしているのです。
時間が経てば、自分も変わる
代表は、組織も将来的には変わる可能性があることを話してくれました。
そして、私自身も3年後には大学院を修了し、税理士として新しいステージに立っている予定です。
その頃には、今とは立場も経験も大きく変わっているでしょう。
だからこそ、「今だけ」で未来を決めない。
この長い時間軸こそが、経営者の視点なのだと感じました。
経営者としての学び
今回の出来事は決して楽しい経験ではありませんでした。
それでも、私にとっては大きな財産になりました。
学んだことは次の4つです。
- 正しさだけでは信頼は築けない
- 相手に届く伝え方も経営者の能力である
- すぐに決断しない勇気を持つ
- 未来の自分のために選択肢を残しておく
私は税理士を目指しています。
税務や会計の知識だけでなく、人との関わり方や組織マネジメントも学び続けなければ、本当の意味で経営者を支える税理士にはなれません。
今回の経験は、決して失敗ではなく、「経営者になるための授業料」だったのだと思います。
おわりに
行動することは、今でも大切だと思っています。
ただ、その前に一度立ち止まり、
「今、本当に決断するタイミングなのか。」
と自分に問い掛けることも、経営者には必要なのだと学びました。
決断しないこと。待つこと。選択肢を残すこと。
これは私が師匠から学んだ、経営者としての大切な考え方です。
もし今、仕事や人間関係で悩み、「今すぐ答えを出さなければ」と感じている方がいたら、あえて一つお伝えしたいことがあります。
未来の自分が選べるように、今は扉を閉めない。
そんな選択も、時には最善の経営判断なのかもしれません。